Blogger Discrp

どぅーしてココに着ちゃったの?!
  ここは redo_chan という、よく分らない匿名ユーザーが鉄則から外れてブログっている Blog です。

文字を大きくする Ctrl or Cmd + + 小さくする Ctrl or Cmd + - 元に戻す Ctrl or Cmd + 0

すみだはなび

白昼の天照が、袖捲った肌に刺さる日のこと、梅雨が明けたと気づいた。

いつものように─今は遠く離れた場所に営みを設けているが─営業回り、都内の川辺に近い低い街並みを、額に滲む汗を割と頻繁に拭い歩き回っていた。さっきも見た看板がまた現れたところの橋を渡った街は、蒸せた大気が淀んでおり、容赦なく照る白光の太陽へ戻ろうと、憎ったらしいくらい憤っている。不機嫌な路面から照り返す熱気も、さながら灼熱地獄と形容したい。



 
清々しい仕事と思わない私は、拭うのも面倒になった目に沁みる汗を、耐え兼ねて払う程度になり、今日の目的地─アテなどないのだが─を目指していた。大通りを歩き、持ち歩く商材には向かない重たい資料の入るカバンから、使い回されクタクタ小口の地図を出し、人の手が書いた小さなメモを胸から、見比べては見渡せる風景とを合わせた。メモの目印を探し、見える限りはビルばかりの、その一画から昔ながらの棲み屋が並ぶ場所を検討してみては、また歩き始める。随分色んな街を歩いた気がする、この大きな街は複雑に構成されたはいいが、さして特色のない積み木のようで、私はどこの街だか知らずに、ただ目的地に向かうのだ。書き込みもなく側が擦り減った地図は古いもので、変化の激しい都内は描かれたものと見るものとでは、随分と変わってしまって、指示された─今日の営業先─場所に入る横筋を探すのに苦労した。住宅街らしいが、といっても40m四方なのだろう、立ち並ぶビルの森の中、みすぼらしく取り残されたような所だろう。ふと感付いた横筋に入った先の三叉路、右に入って直ぐ、ついにその町はあった。苦労が全身に泡立った果てに、この町はあった。確かめようと暫く眺めてみると意外な様相に気が、落ち着いた。暑い中を散々歩き回った残りがドッと、目の中に流れ込み、只でさえ朧な古い街並みが、更に霞んだ。何かに背中を押されたのか、何かに呼ばれたのか、不意に私は、この町へ入り込む。もう忘れ去られたのだろうか、ひっそりと静まるこの場所は、少し前の鬱陶しさを徐々に消していく。汗を拭っていたのも束の間、ガラリ変わってしまった気温差に、汗が退いてしまったと気づいた。ここを囲む外のビル陰は、曇みたく此の辺りを覆い、様々な暑苦しい風がどういう事か、この街まで入り込めないらしい。懐かしい記憶を引き出す、造りの建物ばかりだから、今日勧めて回る商材は、住人には細かく噛み砕いて圧してみようか・・、同業が回ったようだが成果は思わしくない、きっと敬遠されただろう・・、私は歩きながら観察し、ポツリポツリ呟いていた。散策も兼ね一通り歩き回った。重たく邪魔だったコイツ(カバン)が仕事をするのはこれからだ。しかし、ふと、思うことが出た─日照の良い日で、外からすると随分過ごし易い所だが、こうも人の気が失せているのはどういうことだろう?─経験上、都内の閑静な住宅街にありそうなものだが、どうも違う。経験が、人の気を掴む感覚を得ているのだが、少し不安を引き出す町の感覚が、今日の徒労を予感させる感覚が、非常に気に食わない。振り払うつもりで目前にある、細々しいが真っ直ぐ貫く道の両脇に、群れ為して立ち並ぶ軒の中から、半ばヤケな張りに似た勘で戸口を決める。最初の一軒目だ、感触を確かめるだけでいい、恐らくは年老いた者ばかりの棲み屋なのだ、時間を持て余す彼らの話を飽きるまで聞いてやり、ついでにここいらの事情でも、と私は勇んでいた。ここへ辿り着くまでに、見かけた気になる街頭看板はこの時、頭の隅に追いやられていた。


今夜は隅田の花火大会か、一杯やれる。

0 件のコメント:

コメントを投稿